不登校経験者のおぼえがき

不登校経験者のNPOスタッフが不登校についていろいろ書くブログ

敏感すぎる子どもと不登校―2/25不登校親の会講演録

昨日は滋賀県大津で行われた不登校親の会にお邪魔してきました。

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今回はゲストスピーカーとして、僕の不登校体験談や考え方についてお話してきました。40分くらいでまとめられたらいいかなー、と思っていたら、気づけば1時間も話してしまいましたが・・・。

その後、2グループに分けられた分科会では前半と後半で2グループともに参加したのですが、ここでとある共通の話題が出ました。正直なところ、講演の中でさくっと流した中身だっただけに、こんな興味を持たれるとは思ってもいない事柄でした。

Highly Sensitive People(HSP)という特性があって、アメリカ国内に約5億人が持っていると言われています。僕が知ったのは2年半ほど前、詳細は上記のメインブログの方に書いてあります。

「過度に敏感な人」という意味になる直訳が示すように、騒音、雰囲気、人間関係などに非常に敏感な人のことを指します。ちなみに、同じような特性を持つ子どもは「Highly Sensitive Child」(HSC)と形容されることもあります。

今回の講演では、小学生のころから風船の破裂音や車のクラクションなどとにかく大きい音や怒鳴り声が大の苦手で、おそらく僕はこういう特性を持っている、とかなり簡単に説明しただけだったのですが、いざ分科会に入ってみると

「僕もHSPの傾向があるかもしれません」
「うちの息子もこれかも・・・」
HSPで困ったことやどう付き合ってきたか教えてください」
「さっきの本、絶対買おうと思います」

などと、体験談以上に参加者の皆さんの興味をかなり引く結果になりました。そういえば、講演中にさくっと触れたとき、その場にいた当事者の子どもさんが「それ、めっちゃわかるわー」と思わず漏らしていたのが少し印象的でした。

僕自身、人の感情が露骨に伝わってきてしまう人間なので、例えば相対する人がものすごく苛立っていると何かしょんぼりした気持ちになりますし、その苛立ちをなんとかしなきゃ、という意識で行動してしまいます。そして火に油を注ぐことがままあります。

なので学校現場で「いい加減にしなさい!」などと強い口調で先生が注意する瞬間が本当に苦手でした。小学校のときは家でしょっちゅうこうして叱られていたので、学校来てまでそんな声聞きたくないわ・・・という気持ちもありました。

何か音に過敏に反応したり、雰囲気や環境に適応することが難しい場合、甘えとかビビりなどとよく言われますが、もしかすると「過度に敏感」なだけかもしれません。そして人口の20~30%がこの特性を持っているほど、それは決して珍しくないのです。

特に不登校の子どもたちにとっては怒鳴り声、環境適応の面で非常に苦労することが多いと思います。それを本人の努力不足とたしなめる前に、これは生まれ持った特性なのだという認識を持って、上手に付き合える方法を一緒に考えてあげるのが大事ではないでしょうか。

ちなみに講演の話に戻すと、来月は奈良で不登校に関する講演をさせていただく予定です。これに限らず当事者としての不登校体験談はこれからもどんどん講演できればな、と思っていますので、ご依頼あればぜひお知らせください。一応全国どこでも行きます(費用などは要相談)。

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びわ湖放送の健康番組で不登校が病気扱いされていた件

この番組のことを教えてくださったのは、いつもお世話になっている保護者の方。僕は滋賀のNPO不登校や自分に自信が持てない子どもたちと関わっているので、おひざ元のびわ湖放送滋賀県の提供で(ここ重要)どんな不登校特集を組んだのか、すごく興味がありました。

ただ、僕は住まいが京都なのでびわ湖放送が入らず、しかも放送時間中は仕事で大阪にいたため結局見れず。もはや視聴を諦めていたのですが、なんとびわ湖放送YouTube公式チャンネルにアップされているのを発見。早速5,6回ほどリピートしつつ観ました。

で、僕が得た結論。
 

「お医者さん目線から話されると、そりゃそうなるか・・・。」

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番組のバックナンバー見てたら乳がんの知識だとか、そもそもが滋賀県民の健康を守ろう!というコンセプトなので、不登校に関しても解説してるのはお医者さん(精神科医)なんですよね。なので例えば学校の先生とか、スクールソーシャルワーカーとか、そういう方の声が一切ない。

だから、今回の番組のサブタイトルにも『不登校は治る「病態」である』という、明らかにお医者さん目線であることがうかがえるものがつけられている、というわけです。そりゃ確かにお医者さんからすれば治すものなのかもしれません。僕はそこに大きな違和感を抱きました。

実際、僕の周辺の当事者の方々が眉をひそめたのがその「不登校は治る」という文言。

もともと放送前からこのサブタイトルに違和感を覚える人が多かったのですが、不登校の親御さん向けのFacebookグループで動画をシェアしたところ、案の定この内容ってどうなの???というコメントが止まらなくなってしまいました。

一応言っておくと、そうだその通りだ、と思う内容もありました。

とくに、不登校に対する親や周囲への理解や認識不足というのは、不登校の子を持つ親御さんとお話ししていてもよく聞く話です。下手すれば学校関係者ですら不登校に対して誤った認識を持っていることもあります。

しかしながら、「うつ病双極性障害など、なんらかの病気を持っていた」「だから不登校は治せる」(ついでに人間関係のこじれも治せる)というのは、全部が全部そうじゃないだろう、と思います。

たとえば、今も関わっている高校生の生徒は、中学時代に目標を見失い不登校状態にありました。生活リズムもぐちゃぐちゃで朝に寝て昼に起きる日々。そこでまずは、生活リズムを立て直して朝起きることを念頭に生徒と関わりました。

その結果、リズムを立て直すことに成功すると見失っていた目標も新しく見つけ、あれよあれよという間に生徒は学級復帰することができました。今も毎日学校に通っていますが、ここにお医者さんの介入は一切ありません。

番組の後半、夜眠れない・朝起きれない症状が取り上げられていますが、他の子どもたちが学校にいる日中は無気力で、逆に学校から帰宅する夕方や夜になると元気を取り戻すというのは不登校の子どもたちにとってよくあることなので、それをすべて「うつ病」と片付けるのは些か暴論な気がします*1

また、どんな重い症状でも適切な治療を受ければ8カ月以内に70%の子どもたちが不登校から離れられる、というデータも紹介されていましたが、この子どもたちが果たしてその後学級でちゃんと馴染めているのか、結局無理して通っていたり再び不登校になっているのでは?というのも、疑問です。

不登校は100人いれば100通りの要因があります。しかもどれも単純なものではありません。ちなみに僕は人間関係がうまくいってなかったですし、先生の厳しい目、教室のあの独特の雰囲気がダメでした。これも果たして「病気」なのでしょうか・・・?

やはり、お医者さん目線「だけ」しか語られていない、偏った情報で不登校を解説するのはあまりにも危険じゃないか、というのが総じての僕の意見です。ぜひ、この番組を見た他の不登校経験者、当事者の皆さんの意見も聞きたいな、と思います。

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*1:一応心理学部を卒業してるので、うつ病ってこんな簡単な基準だっけ?という疑問も

不登校に大切な「ナナメの関係」

スタッフをしているNPOで、中学生といっしょにごはんを食べる事業をしています。

そこでは好きな食べ物だとか、学校で流行っていることとか、とにかく夕食を囲みながらいろんなコミュニケーションをとるのですが、回を重ねていくうちに中学生自身もこの場所を毎週楽しみにしてくれているようで、最近では誰かが休むことを知ると「なんでおらんの!?」と中学生がガッカリすることもしばしば。

僕としてもいきなり名前を呼ばれて「こないだむかついたんやけどさー!」と中学生の愚痴を聞いたり、来週は別の仕事で来れないかもしれない、と知らせると「そんなんアカンで!!」などと言われたりして、こういう友達でも先生でもないつながりが心地良くて毎回楽しみな時間でもあります。

この事業は不登校の中学生向けにやっているものではないのですが、先述した「友達でも先生でもないつながり」は、実は不登校の子どもたちにとってものすごく重要なものです。

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話は変わって、先日こんなワークショップで講師を務めてきました。

要するにカツオやワカメ、タラちゃんから見るサザエさん一家(磯野家)を解説して、ついでにちびまる子ちゃんのさくら家における友蔵の重要さも紐解くと、磯野家が理想の家族と言われるのは「ナナメの関係」になり得る人物がカギを握っている、という話です。

で、この「ナナメの関係」が、冒頭に書いた「友達でも先生でもないつながり」にあたります。

「ナナメの関係」と対比するように、親子や上司と部下など、上下の関係のことを「タテの関係」、友達や恋人などフラットな関係を「ヨコの関係」と呼びます。例えばカツオなら波平やフネはタテの関係。中島くんや花沢さんはヨコの関係です。

それに対し、子どもから見て、上下でもフラットでもないその中間的関係にあたるのが「ナナメの関係」です。カツオから見るとマスオやノリスケがこの関係にあたります。

マスオやノリスケは、カツオに対して何かを指導したり叱ったりする上下の関係でもないし、かといって友達同士のような関係でもない。人生の先輩として時にアドバイスしながら、暖かく見守り接する役割です。ちなみにタラちゃん目線だと祖父母の波平とフネ、叔父母のカツオとワカメが「ナナメの関係」になるわけです。

このようにちょっと年の離れた親戚はもちろん、不登校の子どもたちにとってはフリースクールや学校外の学び場、居場所で出会うボランティアのお兄さんお姉さんが「ナナメの関係」。冒頭に書いた事業で言えば、僕と参加してくれる中学生もまさしく「ナナメの関係」が成立しています。

学校がしんどい気持ち、家でも息苦しい気持ちは、まず学校が信頼できない不登校の子どもたちにとっては学校の誰かに話す、なんて選択肢はあり得ません。しかし家で両親に打ち明けるのも、ものすごく勇気が必要。そこで「ナナメの関係」の出番がやってきます。

サザエさんを観ていると、カツオが良くノリスケにサザエの愚痴をこぼしたりするシーンが見受けられます。この関係が、不登校の子どもたちに必要不可欠なのです。

フリースクールだったり、不登校の子どもたちの居場所が成立するのはまさしく「ナナメの関係」があってこそ。ここにいる大人は、明確な上下関係で成り立った関係ではありません。それは、「先生」ではなく子どもが大人を「(苗字)さん」だったり、あるときはあだ名で呼ぶ関係性に表れています*1

上から接しない大人が子どもの今の状態をあるがままに受け入れ、暖かく接し見守ることで、子どもたちにも「学校が嫌いな自分で大丈夫なんだ」、と自分を取り戻すきっかけが生まれます。「学校が嫌い」なことで社会から拒絶され続けた子どもたちにとって、こんな場所はまさに天国そのもの。

僕自身も不登校の当事者だったとき、参加していた居場所事業で大学生のお兄さんお姉さんと遊ぶ時間がすごく楽しかったのを思い出します。あのとき散々「ナナメの関係」に救われ、お世話になったからこそ、今の子どもたちの「ナナメの関係」を目指す自分がいるのかなぁ、なんて時々思います。

ぜひ、不登校の子どもたちには、友達でも先生でもない「ナナメの関係」で暖かく接してくれるちょっと年上の人たちとたくさん出会ってほしいな、と思います。

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*1:もちろん、場所によっては「先生」と呼ばせるフリースクールも中にはあると思いますが